トランプ米大統領就任による世界経済の動向
六本木ヒルズでモルガンスタンレーのシニアアドバイザーであるロバート・フェルドマン氏からトランプ大統領就任後の世界経済の動向について、現状認識を踏まえた見通しについて話を伺いました。少し長くなりますが参考となりますので要約を掲載します。
冒頭、竹本直一衆議院議員から挨拶があり、アメリカはインフラに100兆円も投資すると言っているので財政赤字が増えいずれは円安ドル高になるだろう、OECDは日本の成長力を弱くみているがそれほど弱くはないと思う、トランプ大統領は対中国のパートナーとして安倍総理に期待しているなどの発言がありました。
フェルドマン氏によると、トランプ政権ではインフラ整備と規制改革を進めるということが良い点であり、閣僚も優秀な人物が多く、政策に関して不透明な人物もいるが質は低くはないので安心しているとのことです。逆に、支持率が低く、政権側と国民の考えがあっていないのが大きな問題であり、その意味では日本はうまくいってると思うとのこと。また、情報がうまく出てこない可能性や議会との関係で共和党が大統領を支持しない可能性もあり心配だとのことです。これは移民問題もあるが、共和党内にトランプ大統領の大きな政府に反対している議員も多いことによるとのこと。また、ティラーソン新国務長官はしっかりしていると言われているが、国務省嫌いと言っていたので国務省内の職員のやる気が出なく、外交が行き詰まる可能性が高いのではとのことでした。
さらに、トランプ政権は、1920年代や1930年代と同じことを繰り返そうとしており、もしトランプ政権が保護貿易の政策を出すと中国はすぐに報復措置として農産物や飛行機でブラジルや欧州と交渉する可能性があり大変難しい問題になるだろうとのことです。トランプ大統領の中で中国の位置はそれほど高くないようだが、これが間違いであるとのことでした。
二国間貿易協定は努力する役人はいないので議会を通らないだろうから、日本はTPPを元に交渉を行ったら良いと思うとのことです。
トランプ大統領がアメリカ大統領として現状を把握するためには、半年くらい必要で当面は混迷が続くのではとの予測です。
経済予測では、アメリカは今年、来年は2パーセントの成長と予測するが、インフラ整備と減税、保護貿易をしないということが前提であり、この前提が崩れると0.8パーセントになると予測されるので要注意であるとのこと。中国は、成長率はジリ貧になるが、重要なのは根本的な矛盾の解決であり、国営企業の体質を変えない以上はこれ以上の成長はしないだろうが、6パーセントは維持すると思うとのこと。欧州は、英国離脱が大きく、英国離脱による保護主義の台頭が欧州全体に影響を及ぼすので要注意であるとのことでした。
また、アメリカはインフレになるので金利が上がり、日本はデフレをまだ脱却していないので、年末にならないとゼロ金利は外さないだろうから、その間金利格差が開き円安が進むので、年末までに125円の可能性はあるとのことです。日本は上場企業の収益が上がるので株価は上がるだろうが、アメリカの株価はこれ以上高くなるのは難しいのではとのことです。
日本経済の潜在成長率は0.2から0.3くらいであるがGDPがのびているので、これが労働市場を圧迫し今後どうなるかというと、男性の労働力参加率は高齢化のため下がっており、女性の参加率は上がりアメリカと変わらないところまできているためこれ以上労働に参加する人は求めづらく、高齢者の参加率もこれ以上あがることが考えにくいため、労働不足が大きな問題になるだろうとのことです。GDPが1パーセント伸びると45万人の労働者が必要であり、今後100万人の労働力が必要となるためこの労働力をどう確保するかが課題だが、外国人労働者が現在徐々に増えているので、ここがポイントになるだろうとのことでした。
生産性に関しては、企業統治や税制改革は進んでおり、労働改革も働き方改革でかなり進んでいるので、今本当にチャンスなのは農業改革だとのことです。
トランプ政権で不確実要因が増えたが、日本はそれ故に本来やるべきことをもっとやるべきだということで、日本にエールを送りたいとのことでした。